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TCGについての研究報告 その4 TCGの現状と未来

トレーディングカードゲームについての研究報告

鈴木銀一郎


〔その4-1 事例研究〕

ここで鈴木(著者)が関係しているTCG『モンスターメーカー・リザレクション(MMR)』
について、デザイン段階からの経緯をできるだけ詳しく、具体的に説明し、
研究材料として提供したい。

『モンスターメーカー(MMC1と略)』は、1989年「ファンタジーカードゲーム」の
第1弾として発売されたものである。
ゲームデザインは鈴木銀一郎、イラストは九月姫。
テーマはダンジョンの奥まで行って、帰ってくるというレースゲームである。
前述したように、『MMC1』はそのキャラクター性によって
ベストセラーになり、カードゲームのブームを巻き起こしたものである。
このゲームのデザインは5日ほどで終わったが、
キャラクターのネーミングについてはふさわしい名を模索して2週間を要している。
それだけキャラクター性を重視していたわけである。
『MMC1』の実売は約10万、MMシリーズは12タイトルがリリースされた。
また、ゲームソフト(ゲームボーイは9万)、コミック(単行本は5万)、
小説(『ドラゴンライダー』は4万9千)など、他ジャンルへの展開も行われた。
『モンスターメーカー』のタイトルを知っているユーザーは30万以上、
ファンは3万程度と判断していいだろう。
ただし、TCGの発売以来『MMC1』の売れ行きは激減し、
他ジャンルへの展開も見られなくなっていた。
『MMR』の企画が持ち上がった2000年には、
MMシリーズは休眠状態にあったといっていい。 
『MMR』のゲームデザインは、
当時鈴木がさほどTCGのルールに詳しくなかったこともあって、
専門のデザインチームであるアークライト社が担当することになった。
完成したゲームシステムは他のTCGの対戦(duel)型と違い、
『MMC1』のコンセプトを受け継いだレースゲームとなっている。
テーマは「ミッション達成の旅」であるが、注目すべきは、
カードが持つ「多義性」にある。
どのカードも裏にして出せば1つのミッションを果たしたとみなされ、
パーティレベルが1アップする。
簡単にいえば、早く10のミッションを果たし、
10レベルに達したプレイヤーが勝ちになるというシステムである。
パーティに参加できるキャラクターも、ミッション達成を阻むモンスターも、
パーティレベルの制限を受ける。
そこで、高レベルのキャラクター、モンスターだけでデッキを構築しても
勝つことはできない。
高レベル、中レベル、低レベルのカードをバランスよく配分しなければならない。
モンスターとキャラクターとの戦闘は、他のTCGと違ってダイスを振って解決する。
(他のTCGと違う点はもう1つあり、3人以上でもプレイできることである。
 このマルチプレイも面白いのだが、人数が増えるとそれなりに時間もかかる) 
客観的に見て、『MMR』のゲームシステムには高い評価が与えられるべきであると
判断している。(鈴木もこのゲームにハマっているといってもよい)
『MMR』は2001年8月にエポック社から発売された。
スターターセット1500円、ブースターパック300円、
初回製作はスターターセット12,000、ブースターパック120,000であった。
(この発売数はTCGとしてはBクラスである)
この発売に合わせ、小説2作、RPG1作もリリースされた。
MMのこれまでの実績からすれば、初回製作は完売すると予想されていたが、
『MMR』は小説、RPGとともに苦戦した。
その理由として、『MMC1』の大ヒットからは10年以上たっており、
当時のファンの年令がTCGユーザーの年齢層より高くなってしまったこと、
5年近くの休眠状態のため新しいファン層の獲得ができていなかったこと、
『MTG』や、『モンスターコレクション』の先行ゲームに
潜在ユーザーを取られていたことの3点が挙げられる。
ほぼ同時期に発売された『ファイアー・エムブレム』がまあまあの成績を上げ、
後発の『ガンダム』が大成功を収めている点を考慮すれば、
TCGは最低でも数十万のファン層がないと
これからの成功はむずかしいといわざるを得ない。
その後、『MMR』は01年12月に第1エキスパンション(35,000パック×300円)が
発売されるが、状況は改善しなかった。
02年3月のスペシャルエキスパンション(500円)では製作数は5,000パックに
縮小された。『MMR』はBクラスから、Cクラスへと転落したのである。  
このままで推移すれば『MMR』は市場から姿を消すと判断した鈴木は、
02年5月からメーカー主催のコンベンションだけでなく、
販売店主催のコンベンションにも積極的に参加することにした。
鈴木はアナログゲーム業界では最長老デザイナーとして知られており、
その知名度を活かそうとしたのである。
Aクラスのゲームなら、デザイナーがコンべンションに参加しようがしまいが
売れ行きに大きな影響はないであろう。
しかし、Cクラスのタイトルでは(元のパイが小さいので)少なくない影響があった。
特に、公式戦、フリープレイを問わず、鈴木が負けた場合は、
相手の希望するカードに「参りましたサイン」をしたのが評判になったようだ。
コンベンション参加者はある月には2名のみということもあったが、
その後は徐々に増えていった。
(ただし、個人の動きに影響を受けるロットの商品を大手メーカーが
 手がけるべきかどうかは、別の問題として存在する)
 02年8月の第2エキスパンションでは、製作数は10,000にアップした。
 03年3月、「リバイズド」(改訂版)で、プレコンデッキ
(そのままプレイ可能なようにあらかじめ構築してあるデッキ)2種
(各1500セット×1500円)と、
エキスパンションパック(40,000パック×300円)が発売された。
製作数だけを見れば、CクラスからBクラスに復活したことになる。
このころから、『MMR』では、販売店主催に代わって
ユーザーが主催するコンベンションが登場する。
現在では、ユーザーが主催するコンベンションが圧倒的に多い。
したがって、その雰囲気は和気藹々であり、終了後のオフ会も常識となっている。
『MTG』のように最終的に賞金につながるコンベンションは勝負に関して
非常にシビアであり、初心者のプレイヤーに対しても「待った」などは
許されないようである。
(中にはイカサマを働くプレイヤーさえ存在するという)
ところが、『MMR』のコンベンションではルールの解釈違えなどでは
「待った」が許されるのが普通である。
03年8月の「リバイズドスぺシャルエキスパンション」(500円)10,000パックは
やや苦戦。これを受けて、
04年3月の「第2スペシャルエキスパンション」は60枚入りのボックス(3000円)
という変則な形で発売になった。
製作数は1800だったが、これは早々と完売になった。
ただし、次の04年8月のエキスパンション(10000パック×500円)は
完全な失敗だった。
入っている新カードを使って新しいタイプのデッキを構築しようとする意欲が
湧かないのである。
「新しいタイプのデッキ」とは、いい替えると、「新しいコンボ」ということになる。
TCGの最初のエキスパンションは、より「強力なカードの出現」でいいかもしれないが、
以後のエキスパンションでは、新しいコンボの可能性を
提供しなければならないことがよく理解できる。
新しいコンボをデッキに組み込む、
それが「ユーザーが情報の発信源」ということであり、
TCGの魅力の根源であるからである。
このため、『MMR』は04年12月の現在、消滅するか、新しい道を求めて
再出発するかの岐路に立っている。


〔その4-2 TCGの現状と未来〕

現在、TCGは曲がり角に来ているといわれている。
それは、売上規模に比べると、あまりにもタイトル数が少ないからである。
また、日本で発売されてからすでに10年を経過したことにより、
一般ユーザーに「飽き」がきているとも考えられる。
(賞金を目指すプレイヤーに「飽き」はないだろうが)
しかし、あまりにも失敗例が多いため、メーカーは新しいTCGの開発を
ためらっているのが現状である。
このあたりで、新しいイノベーション、あるいは革命的な手法を
ユーザーは望んでいるといっても間違えではないだろう。
では、新しいイノベーションとは何か。
その解答を発見したゲーム企画者が成功を得るとしかここではいえない。
ただ、TCGの「情報のユーザー発信」は、今後においても
ゲームにおける重要な手法として存在し続けることは間違いないだろう。
(いうまでもないが、活況を示しているネットゲームは、
「ユーザー発信」の手法の活用そのものということができる)
アナログゲーム界では、RPGとボードゲームのドッキングのように、
ジャンルとジャンルをクロスさせる中で「ユーザーの情報発信」を
活用させることが有力であると思われる。


戻る TCGについての研究報告 その3 TCGがもたらした影響
最初 TCGについての研究報告 その1 TCGの位置づけ


この記事は、2005年1月に、
日本シミュレーション&ゲーミング学会(JASAG)の研究部会へ寄稿されたものである。


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